シーズヒーターとは

技術資料

シーズヒーターってなんですか?

シーズヒーターとは、シーズ(Sheath)=鞘を被ったヒーターのことです。ここでの“シーズ(Sheath)”とは、ヒーター表面の金属パイプのことを指します。

ヒーターの種類の中には、発熱線が露出した状態でそのまま電流を流して使用するヒーターもあります。使用中のドライヤーの中をのぞいてみると赤く発熱しているスプリングのような金属線が見えると思います。これが、裸線ヒーターです。

このような裸発熱線のヒーターは、構造も簡単で価格も安価に製作できます。しかし、電流が流れている金属が剥き出しなので、漏電や感電の危険性が高く、どのような場所でも使えるというわけにはいきません。そこで、安全性が高く、使う場所を限定しないように開発されたのがシーズヒーターです。

一般的なシーズヒーターの断面図を図-1に示します。シーズヒーターの金属パイプの中には、発熱線と共に電気絶縁材が詰まっています。電気絶縁材のおかげで電源がONの状態でヒーターに直接触れても感電しません。でも、高温になっているので、触らないでください。火傷します!

(図-1)一般的なシーズヒーターの断面図

新熱工業では、使用目的に合わせて、ステンレス鋼、インコネル鋼などの材料からできた部品を組み合わせてシーズヒーターを作っています。

シーズヒーターの材料

シーズヒーターは外側パイプ、電気絶縁材、発熱線という3つの部品からできています。それぞれの部品について、どのような材料からできているかを紹介します。

1.外側パイプ(Sheath)

シーズヒーターの外側の金属パイプはステンレス鋼、インコネル鋼、チタン、アルミなどの素材でできています。

材料 特長
SUS304 耐食性や加工性に優れ、耐酸化性・耐熱性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼
SUS316L SUS304より耐食性能に優れたオーステナイト系ステンレス鋼。水加熱用などで使われる。
NCF800 耐熱性・耐食性・耐酸化性に優れた高ニッケル耐熱鋼。SUS304やSUS316Lでは耐えられない高温域加熱で使用される。
チタン 非常に耐食性能高く、高価。
アルミニウム 加工性がよく柔らかい。
NCF600(非標準) クロム、鉄、炭素などの成分をニッケルに添加した耐熱・耐食合金。
耐食性能高く、高価。

新熱工業では、使用環境や取付側材質の熱膨張など、お客様の使用条件に合わせて最適な材料を選定、シーズヒーターを製作します。

2.電気絶縁材

新熱工業のシーズヒーターはヒーター内部の絶縁材に酸化マグネシウム(MgO)を使用しています。

酸化マグネシウム以外にもシーズヒーターの電気絶縁材料として使われている絶縁材はたくさんありますが、酸化マグネシウムは、入手性も良く、価格も比較的安価で、電気絶縁性能も良好なので、シーズヒーターには最適な材料です。

この材料があるおかげで、新熱工業が現在のような工業用シーズヒーターが製作できるといっても過言ではありません。

3.発熱線

発熱線には、主にニクロムの丸線を使用しています。新熱工業ではヒーターの外径が細くても比較的出力の高いヒーターが欲しいお客様のご要望に応えるため、帯状のニクロム線ヒーターも開発し、既に実用化しています。

出力の高いヒーターにするには、太い発熱線を使う必要があるのですが、図-1からわかるように、太い発熱線にすると絶縁性を保つ観点からヒーターの外径を太くする必要が出てきてしまいます。そこで、新熱工業では太い発熱線の代わりに帯線を使用することで、ヒーター外径を変えずに比較的高容量のヒーターを作ることができるようになりました。

材料 特長
NCHW1・ニクロム丸線 ニクロム丸線
NCHRW1・ニクロム帯線 ニクロム帯線
FCHW2 鉄クロムと呼ばれる発熱線で、抵抗値がニクロムより大きい発熱線
DSD・丸線(非標準) ある発熱線メーカーの製品(DSDは商品名)で、鉄クロムに該当、抵抗値は、NCHW1とFCHW2の中間程度の発熱線
HY TEMCO・丸線(非標準) ある発熱線メーカーの製品(HY TEMCOは商品名)で、鉄ニッケル線
※温度による抵抗変化が比較的大きく温度が上がると抵抗値が大きくなるので流れる電流値が自動的に小さくなり、発熱量が小さくなります。それゆえに、この発熱電を使用したヒーターは、「自己制御型ヒーター」などと呼ばれることがあります。

新熱工業では、上記の様な、色々な材質のパイプ、色々な材質の発熱線を準備して、お客様の様々なご要望に対応しています。ヒーター1本からの特注品にも対応しておりますので、カタログやホームページに記載されていなくとも、ぜひ一度、お声がけください。

シーズヒーターの特徴

シーズヒーターの特徴には以下のようなものがあります。

・通電中にヒーターに触れても感電せず安全に使用できる
・任意の形状に曲げられる
・色々な外径のヒーターを製作できる
・電源と接続する線を片側からのみ引き出せる

シーズヒーターの特徴について詳しく知りたい方は、以下のページもご覧ください。

シーズヒーターの特徴

シーズヒーターの用途

シーズヒーターは使われる範囲が余りにも広く、さまざまな用途があります。ここでは新熱工業の製品例でお話ししてみます。

用途1.半導体や液晶などの真空用装置用途

シーズヒーターが利用されている一番身近なところとして、パソコンのCPU(集積回路)やスマートフォンの画面、テレビの画面などを作るための装置用ヒーターが挙げられます。

半導体や液晶が作られる過程では、何度も半導体の基板(シリコンウエハー)や液晶の基板(ガラス、有機EL)を加熱する必要があります。その加熱源としてシーズヒーターが使われているのです。

特に、重要工程になる基板への成膜工程では、プレートヒーターと呼ばれる平板形状のプレートの上にそれぞれの基板を乗せて成膜をしていきます。このプレートには、表面の温度分布が均一であることが要求されるため、ムラなく熱すことのできるシーズヒーターが適しているのです。新熱工業ではプレートヒーターに曲げの技術を生かしたシーズヒーターを提供し、プレート表面の温度分布を均一することに貢献しています。

用途2.厨房器用途

レストランやコンビニエンスストアなどのフライヤーとして、シーズヒーターは利用されることがあります。新熱工業の製品では、スーパーフラットヒーターやシーズヒーターなどが使われています。

また、スチームコンベクションと呼ばれる蒸気を使った業務用調理機器や、ピザ焼き用などの業務用オーブン、焼き肉、鯛焼き、大判焼き、タコ焼きなどの鉄板加熱用途、業務用炊飯器、麺をゆでる設備など多種多様な製品に使われています。

用途3.理化学機器用途

シーズヒーターは医学の研究や化学の実験などの現場でも利用されています。

例えば、ビーカーやフラスコ内の溶液などを撹拌するために使うスターラー用ヒーターや各種試験器用ヒーターなどに使われています。

用途4.プラント配管及び機器加熱用途

常温以上に配管や機器の温度を維持する必要のあるプラントでは、シーズヒーターを加熱源として使われています。シーズヒーターは他のヒーターと比べて温度の制御が容易なことやヒーターの交換がしやすいため選ばれやすいです。

用途5.液体加熱用途

シーズヒーターのなかでもプラグヒーター、板フランジヒーターなどが該当します。また、海水などの腐食環境でも使えるチタンパイプのシーズヒーターも製作しております。

用途6.気体加熱用途

シーズヒーターは気体を加熱するためにもよく利用されます。様々な企業の生産設備や研究機関の試験機などでご使用いただいております。

この分野においては特に新熱工業の得意とするところですので、以下で詳しくご紹介します。

クリーンホット

具体的な新熱工業の製品としては「クリーンホット」という気体加熱器があります。「クリーンホット」は新熱工業が得意とする曲げの技術を活かし、加熱器ケース内の気体流路を工夫しています。そのため、外装管が高温ならず、断熱材を施工しなくても使用できます。断熱材によるパーティクルを嫌がる場所などでも使用可能です。

クリーンホット

また、長いヒーターを比較的省スペースに搭載できるため、他社製の気体加熱器に比べ、コンパクトかつ高容量を実現しています。この技術は新熱工業の独自技術です。

クリーンホットのガスの流れ

インラインタイプの気体加熱器

クリーンホット以外の気体加熱器として、インラインタイプの気体加熱器も多く生産しています。

インラインタイプとは、一般的にシェルタイプと呼ばれる容器の様な形ではなく、前後にフランジを付けた配管の形状をしたものを指します。配管の形状の中に、曲げ技術で長いヒーターを複雑に曲げ、コンパクトにしたシーズヒーターが挿入されています。

インラインタイプのガス加熱器

シーズヒーターによる気体加熱器は製作技術が必要

実は『気体にはヒーターからの熱が伝わりにくい』ことから、気体加熱器はシーズヒーターを使った製品の中でも設計および製作が難しい部類の製品です。

気体加熱器はその名の通り、加熱器の中を気体が流れています。同じ構造で水を流した場合と比較すると、気体への熱の伝わり方は水の約2%程度にしかなりません。(大雑把な値です。)。そのために、ヒーターの温度は通常のシーズヒーター以上に高温にする必要があるのです。

しかし、必要な気体温度まで昇温しようとすると、ヒーターが限界温度を超えて破損してしまう懸念もあります。破損の危険性があるヒーターは安心して使える加熱器とはいえません。

解決する方法として、ヒーターの長さを長くしてヒーターの表面電力密度をできるだけ小さく設計することと、流路を狭くしてガスの流速を上げるような設計が重要なのです。

シーズヒーターの使用上の注意点

シーズヒーターを利用するにあたり、以下のような注意点があります。

・ 設計値以上に温度を上げて使用しないでください
・ 空焚き状態で使用しないでください
・ ヒーターの電源を必要以上に入り切りしないでください

シーズヒーターを利用する上での注意点について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

シーズヒーターの使用方法上の注意点

シーズヒーターの製造工程

新熱工業では今までに様々なご要望に合わせたシーズヒーターを製造してきました。以下のページで弊社のシーズヒーターの作り方を紹介しています。工場内は普段見ることができませんので、ぜひ参考にしてみてください。

シーズヒーターの作り方

シーズヒーター一般に関する技術資料一覧